現場から、民間、そして研究へ。児童福祉と向き合うキャリアの現在地。【営業CSメンバー インタビュー】
現場に長く携わり、2023年にAiCANへ。現在はカスタマーサクセス(以下CS)をしながら、研究にも取り組む高木さん。現場と研究を行き来するキャリアと、これから実現したいことを伺いました。
(インタビュー:営業CS部/経営推進部 小山・新井 文:小山)
※本記事は、採用サイトからの転載記事です。
高木伸也 / Shinya Takagi 営業CS部カスタマーサクセス兼調査研究職
大学院卒業後に法務技官として少年鑑別所で勤務、その後児童相談所での勤務などを経て2023年4月にAiCANに入社。現場での経験を活かして、専門的なアセスメントの研修などを中心にカスタマーサクセスとして活用支援を行っている。
趣味は哲学カフェや読書会で人と話すこと。
心理職として、現場を渡り歩いたキャリア
まずは、これまでのご経歴を教えてください。
高木:もともと大学・大学院では臨床心理学を専攻し、卒業後は法務省の法務技官という仕事に就きました。そこでは少年鑑別所で収容された少年たちの面接や心理検査を通して、アセスメントを行う仕事をしていました。
その後、中国地方の自治体で児童相談所に心理職として入職しました。最初の1年は一時保護所、その後3年は児童相談所で勤務し、合計4年ほど現場にいました。
現場のご経験は、今にもつながっているのでしょうか。
高木:当時、少年鑑別所で子どもたちの記録を見ていると、多くのケースで、その背景に虐待の経験があることに気づいたんです。「これは根本的に大事な部分なんだろうな」と感じていました。
それで児童虐待の問題に強く関心を持つようになりました。
児童相談所での勤務経験は、その時に関わっていた子どもやその家族の方たち、関係者の皆さんに恥ずかしくない仕事をしたいと思わせてくれていますね。
代表との出会い、そしてAiCAN入社へ
AiCANへの入社は、どのような経緯だったのでしょうか。
高木:実は代表の髙岡さんが、大学院の研究室の10個くらい上の先輩なんです。一方的に知っていたので、AiCAN社のホームページから連絡を取ったこともありました。
児童相談所で働きながら、なんとなく「もう少し違う形で子どもたちに関われないか」と考えていた時期に、髙岡さんから「良かったらうちに来ないか」と誘われたことが直接的なきっかけです。
そのあとすぐ、「日本子ども虐待防止学会」に合わせて髙岡さんが主催していたフットサル大会があり、そこで髙岡さんや他のメンバーに初めて会いました。そのままの流れで、入社が決まっていった感じです(笑)
入社時、具体的にやりたいことは決まっていたのですか。
高木:正直、そこまで明確ではありませんでした。ただ、現場にいた頃から「児童福祉の領域には、データやエビデンスを蓄積するための基盤が整っていない」という感覚はありました。
そうした基盤を作ることができれば、現場の知見を蓄積できるのではないか。その「基盤作り」に携わることで、現場の仕事のあり方を変える一助になれるならと思い、入社を決めました。

AiCANでのCS、そして研究の道へ
入社後は、どのような業務から始まったのでしょうか。
高木:入社した2023年当時は、社員も10人ほどで、「営業」「CS」といった役割もまだ明確に分かれていない時期でした。
ちょうど実証実験が数自治体で始まるタイミングだったので、AiCANの使い方研修や効果測定の実施など、今でいう営業やCSの走りのような業務をしていました。手探りの部分も多かったですが、自分なりにAiCANを触りながら仕事を覚えていった感じですね。
2024年に導入いただく自治体が増えてからは、徐々にCSとしての役割が定まり、複数の自治体様の活用支援を担当していました。
現在は、CS業務と研究を並行して行っているのですね。
高木:はい。去年の秋頃から少しずつ研究の比重を増やし始めました。
現在はAiCANに週4日勤務をしながら、名古屋大学大学院教育発達科学研究科の博士後期課程に在籍しています。
児童虐待の死亡事例検証から見えてきた、「安全文化」「ノンテクニカルスキル」というテーマ
現在取り組まれている研究について、教えてください。
高木:児童相談所時代に、児童虐待による死亡事例の検証報告書を見る機会がありました。第三者の専門家が集まり、当時の状況を振り返り、何が原因だったのかを分析したものなのですが、読んでいくと、似たような課題が繰り返し指摘されていることに気づいたんです。
例えば、「アセスメントが不十分だった」「コミュニケーションが足りなかった」という指摘は多いのですが、その解決策を示す提言は具体化されていません。同じような議論が繰り返されても検証報告書で書かれたことの検証ができなければ本質的な改善にはつながらないのではないか、と感じるようになりました。
そこで着目したのが、航空や医療、原子力発電など一つのミスが重大な結果につながるハイリスク分野の取り組みです。これらの分野で発展してきたのが「ヒューマンファクターズ(人的要因)」という考え方で、学ぶべき知見が非常に多いと感じました。
例えば、「ノンテクニカルスキル1」の知見です。これは「専門的なスキル(テクニカルスキル)」だけでなく、「その専門性を下支えするスキル」のことを指します。
医療や航空分野では、「どんなスキルが安全やサービスの質のために必要なのか」が具体的に定義され、組織的に研修したり、評価ができる仕組みがあります。
そして、実は医療事故の要因におけるノンテクニカルスキル要因の割合は全体の半数以上を占めていることも報告されています。
出典:【医療安全】ノンテクニカルスキルとは~その意味と教育によるチーム医療の向上
さらに、「安全文化2」というのも重要です。こちらはもともと1986年のチェルノブイリ原発事故以降に原子力発電の文脈で作られた概念で、「安全マニュアルを整備すれば安全になる」、「正しい手順を作れば安全になる」という発想への反省から生まれています。
原子力発電、医療、航空、宇宙飛行、公共交通など国内外における様々な事故の報告書にも「安全文化」に関する提言がなされ、職場の文化から改善する取り組みが行われています。
これらは児童福祉の分野ではほぼ浸透していない考え方ですが、必ず役に立つと信じて研究を進めています。
- ノンテクニカルスキル:定義は「認知的、社会的スキルであり、作業者のテクニカルスキルを補うもの(Flin et ai.,2003)」である。状況認識、意思決定、コミュニケーション、チームワーク、リーダーシップ、疲労への対処などが具体的なスキルとして挙げられる。 ↩︎
- 安全文化:定義は「組織文化のうち、安全やリスクに関する構成員の態度や行動を方向づける側面で(Guldenmund, 2000)」である。航空・医療などハイリスク産業での安全文化の知見を児童保護に適用することが国際的に提唱されている(Cull et al., 2013; CECANF, 2016)。 ↩︎
飛行機事故の原因究明に最重要と言われる「ブラックボックス」。比喩的にいうと、これが児童福祉現場でも残るようにしていきたいと高木さんは話す。
出典:東京航空計器株式会社
今、担当されている自治体様でも、何か取り組みを進めているのでしょうか。
高木:はい。ちょうど担当しているのが、「アセスメントツール」や「児童福祉におけるAI活用」について、先行的に取り組まれている自治体様なんです。
AiCANが提供しているAIによる分析機能についても、単に数値を出すだけでなく、「この数値をどう業務に生かすか」を自治体の方々と一緒に考えながら進めているところです。
これらは一見「テクニカル(専門的)」なものと思われがちですが、児童虐待対応では重要な援助方針について、基本的に会議などの意思決定プロセスを経ます。担当者一人で方針を決めるのではなく、複数人で検討することが前提だからです。
つまり、その過程には必ずコミュニケーションや情報認識、意思決定が絡んできます。だからこそ、先ほどお伝えした「ノンテクニカルスキル」や「安全文化」とも関わってくるんです。
例えば、アセスメントツールは手順通りに実施すれば完了、というわけではありません。「その情報を本当に安全判断に使えているか」「疑問があれば立ち止まれるか」「上司に異論を言えるか」「新しい情報が出たときに判断を見直せる仕組みがあるか」――そこまで含めて考える必要があります。
まだ正解があるわけではないので、試行錯誤しながらではありますが、こうした考え方を少しずつ広げていけたらと思っています。
これからやりたいこと
入社から今までで会社もだいぶ大きくなりましたが、社内の変化などいかがですか。
高木:ありがたいことにCSチームも、最初は数人だけで始まった状態から、どんどん人数が増えて役割分担も進んできました。
会社やチームが大きくなる中で、改めて「自分が本当にやりたかったことは何だっけ」と考えてみた結果、今のように研究にも比重を置きつつ、CS業務にも取り組むという形を取ることにしました。
今後、実現したいことはありますか。
高木:児童福祉の現場で「安全文化」や「ノンテクニカルスキル」といったヒューマンファクターズの考え方が当たり前に使われるようになることを目指したいと思っています。
これは仕事としての目標であると同時に、自分自身のライフワークのようなものでもあって。AiCANと一緒に、これからも進めていきたいテーマですね!
【成島さん(CSリーダー)より】
様々な形で児童福祉現場に携わってきた経験を元に、CSとして現場の業務改善に注力する一方、社内でも色々な知見や新しい取り組みの共有を積極的に行っていただいております。
CSメンバーとしても、一人の専門職としてもとても信頼しています。
高木さんの熱い思いを現場の皆様の課題解決に繋げられるよう、これからもよろしくお願いします!
一緒に働きたい人・応募を考えている方へ
どんな人と一緒に働きたいですか。
高木:個人的には、真面目な人、言い換えると真摯な人と働きたいなと思っています。AiCANのみなさんを見ているとその印象を受けますね。
最後に、この記事を読んでいる方へメッセージをお願いします。
高木:「児童福祉」という領域に関心を持ってくださる方がこんなにいることに、いつもありがたさを感じています。
現場出身の方も、まったく違うキャリアの方も、児童福祉という領域に少しでも関心があれば、ぜひ話を聞きにきてもらえたら嬉しいです!
ありがとうございました!現場・民間・研究と形を変えながら、児童福祉と向き合い続ける高木さん。その分かりやすい語り口と強い思いが印象的でした。
AiCANでは、仲間を募集しています。子どもたちのための仕組みを、一緒につくっていきませんか。