元児童相談所職員としての知見をどう活かすか。AIに向き合う私たちが大切にしていること【CSチームリーダー×DS 社員インタビュー 後編】
児童相談所からAiCANへと活躍のフィールドを移した、太田さんと佐名さんのインタビュー後編です。前職の経験を活かした仕事の進め方や日々のやりがい、そしてこれから目指していきたい今後の展望についてお話を伺いました。(インタビュー:経営推進部 上野・北御門・佐々木 文:北御門・佐々木)
※本記事は、採用サイトからの転載記事です。
太田 茜 / Akane Ohta【写真右】
営業CS部カスタマーサクセス担当 CSチームリーダー
社会福祉士。大学卒業後、横浜市役所に入庁。児童相談所にて、初動対応(相談受付・インテーク)からキャリアをスタートさせ、その後、司法面接(Forensic Interview)の実践や後方支援業務、職員研修の企画調整に従事。産休・育休を経て児童福祉司として復帰後、2024年4月にAiCANへ入社。
現在は現場経験を活かし、アプリの導入・活用支援を行うとともに、現場の声をUX(ユーザー体験)向上につなげるべく、開発チームと連携している。
特段の趣味は持たず、休日は心身を休め、翌週のパフォーマンスに備えるスタイル。
佐名 隆徳 / Takanori Same【写真左】
R&D部開発チーム データサイエンティスト
高校を二度中退後、大検を経て千葉県庁に心理職として採用。児童相談所で児童心理司・児童福祉司として10年以上にわたる勤務と、筑波大学大学院での「児童福祉司のバーンアウト」「心理的虐待の再発」に関する研究論文執筆を両立。2025年2月にAiCANへ入社し、現在はデータサイエンティスト(DS)としてプロダクト・AI開発を行っている。NPO法人理事としての児童養護施設等の現場支援も継続中。
趣味は、道の駅や公園に行くこと。
▼前編はこちら!
児童相談所での勤務経験がユーザー体験の基点に
児童相談所からAiCANにフィールドを変えたことで、子どもの安全の守り方はどのように変化しましたか?
佐名:
目の前の子どもと直接向き合う形から、プロダクトを通じて支える形へと変わりました。今は、児童福祉司の方が抱える苦しみや、その先にいる子どもやご家庭の困難を想像しながら、それを取り除くための仕組みを作っています。直接介入することはなくなりましたが、仲間と一緒に、より広い範囲のご家庭を支えられるようになったと感じています。
太田:
私も同じく、一対一の直接支援ではなく、より多くのご家庭を広く間接的に支援している感覚があります。現場で「これが必要だ」と思っている方々と、それを届けたい私たちがマッチングして、AiCANで業務効率化された分、できなかった支援ができるようになり、それが少しずつ行き渡っていくようなイメージです。自分が現場にいたからこそ、AiCANを使っている職員の方々のすぐ先に子どもたちがいるということが、あえて意識せずとも自分の中に当たり前に存在している感覚があります。

児童相談所での勤務経験や、そこでの業務フローへの理解は、現在の業務にどのように活かされていますか?
太田:
児相での勤務経験があることで、自治体の職員の皆様に親近感を持ってもらえることや、業務の詳細をスムーズにキャッチアップできることは、大きな利点だと感じています。 ベースライン調査(※1)などで、私が児童福祉司として働いていた時の苦労話を共有すると、職員の方も心を開いてくださって、一歩先のオフレコの話を聞かせていただけることもあります。
そうした現場の本音に触れられるのは、勤務経験があるからこそだと感じています。
佐名:
そうですね、「(現場では)こんな機能がほしいな」という感覚が分かっていますからね。それをそのままプロダクトに反映できるというのは、一つの強みなのではないかと思っています。
太田:
たしかに。私は一つのケースワークを深く掘り下げるというよりは、国に提出する統計の取りまとめをしたり、司法面接の面接者を務めたり、研修の企画を担当したりと、どちらかといえば幅広く色々な仕事に関わってきました。
今振り返ってみると、どの仕事の経験も今の業務に生きているなという実感があります。
※1 実証実験やサービス利用開始前に実施する、業務環境や業務フローを把握する調査を指す
お客様と共にAiCANをつくる
現在の仕事のやりがいはなんですか?
佐名:
太田さんとアプリの改修案をブラッシュアップしていく過程には、本当にやりがいを感じています。大切にしているポイントが異なることもありますが、その『違い』があるからこそ良いものが生まれるのだと思います。お互い、アプリの先にいる人のことを第一に考えているのが分かっていますし、こうした議論ができるのはAiCANならではですね。
最近感じた違いは、設計における価値観の違いです。私は現場で業務に忙殺されてしんどかった経験をしたので、とにかく最短で簡単に記録を終わらせられる設計を追求したい。一方で太田さんは、デジタルに不慣れな層でも直感的に使いこなせる、アプリの利用に一歩踏み出せるような手厚い設計も大切にしたい。そんなふうに視点が分かれることもありますが、どちらかが間違っているとは全く思っていません。お互いの価値観を尊重しながら着地点を探っています。
太田:
私はお客様から「このアプリは手放せない」「早く退勤できるようになった」といった声を直接聞くと、やはりモチベーションが上がる実感があります。今の現場の方々が、かつての自分と同じように、事務作業に追われていた焦燥感や疲労感から少しでも解放されたと聞くと、当時の自分を救っているような感覚になるんです。経験を活かしたキャリアを選んで本当によかった、と心から思います。
もちろん、現状への評価だけでなく、もっとこうしてほしいというご指摘をいただくことも多いですが、どの方向性であっても『使っているからこそ出てくる意見』はすべて大事にしたいと思っています。
AiCANはお客様と一緒に育てていくアプリだと思っているので、常々「一緒に育てるつもりで、どんどん意見をください」とお伝えしているんです。そこに応えていくことが、今の私の大きなやりがいです。

データやAIの活用を進める中で、自治体(お客様)が抱いていらっしゃる懸念点に対し、お二人が大切にしている考え方や実践している具体的な解決のためのアクションなどがあれば教えてください
太田:
以前AiCANアプリに、AIによる要約機能が実装された際、お客様から「担当者以外でも要約できるようにしてほしい」というご要望をいただいたんです。
ただ、AiCANとしては、ケースの背景を十分に把握していない人がAIの要約だけを見て、それをケースの全てだと誤認して対応してしまうことの危険性を重く受け止めています。ここは倫理の側面から、とても大事にしている部分なんです。
一方で、現場の方々がそうおっしゃる理由も、自分が現場にいたからこそ痛いほどわかります。ですから、お客様のご要望を尊重しつつ、こちらの意図をどう説明してご理解いただくか、あるいはどこで折り合いがつけられるのか等、バランスを考える場面では、最善の判断ができるよう思考を尽くすようにしています。
開発側の意図と現場の思い、その双方の視点に立って調整していくことが大切だと思っています。
佐名:
私は、現場がAIを導入する際に抵抗感があるのは当然のことだと思っていて、その懸念をどう解消するか、自分なりの考えを持つようにしています。人がAIに抵抗を感じる理由は、研究によるとAIリテラシーやAI機能への不信感などが指摘されています(※2)。リテラシーを急に高めるのは難しいですが、機能への不信感については、実際に使ってみて「これなら使える!」と実感できれば解消できるはずです。
ですから、現場の懸念がどこにあるのかをエビデンスに基づいて具体的に理解し、そこへ対策を打つイメージを持っています。AIの設計においても、不信感が払拭されるよう、効果が見えやすい設計を心がけています。
※2 【参考文献】Acosta-Enriquez, B. G., Farroñan, E. V. R., Zapata, L. I. V., Garcia, F. S. M., Rabanal-León, H. C., Angaspilco, J. E. M., & Bocanegra, J. C. S. (2024). Acceptance of artificial intelligence in university contexts: A conceptual analysis based on UTAUT2 theory. Heliyon, 10(19).https://doi.org/10.1016/j.heliyon.2024.e38315
Choung, H., David, P., & Ross, A. (2023). Trust in AI and its role in the acceptance of AI technologies. International Journal of Human–Computer Interaction, 39(9), 1727-1739.https://doi.org/10.1080/10447318.2022.2050543
Scharowski, N., Perrig, S. A., Aeschbach, L. F., von Felten, N., Opwis, K., Wintersberger, P., & Brühlmann, F. (2024). To trust or distrust trust measures: Validating questionnaires for trust in AI. arXiv preprint arXiv:2403.00582.https://doi.org/10.48550/arXiv.2403.00582
Wang, B., Rau, P. L. P., & Yuan, T. (2023). Measuring user competence in using artificial intelligence: validity and reliability of artificial intelligence literacy scale. Behaviour & information technology, 42(9), 1324-1337.https://doi.org/10.1080/0144929X.2022.2072768
今後の展望
今後どのようなところに注力したいと考えていますか?
佐名:
私は、現場にある苦悩や課題(ペイン)を取り除く手段として、現在はアプリのユーザビリティの向上、つまりアプリの使いやすさに最も注力しています。そしてAIの開発・活用についてもさらに深く踏み込んでいきたいと考えています。
太田:
私は二つの軸で考えています。一つは、現場でDXを推進されている方々とのコミュニケーションです。DXは現場の皆さんの納得感があって初めて進むものだと考えているので、引き続き対話を大切にしながら進めていきたいです。もう一つは、AiCANを導入されている自治体様同士のネットワーク作りです。2025年夏にAiCANをよく使ってくださっているユーザーを集めた情報交換会を行いました。同じアプリの利用者という共通点をもとに、自治体の垣根を超えた横の繋がりを支援できるのも、AiCANならではの価値だと思っています。

AiCANで働くことに興味がある方へ
ありがとうございます。最後に、公務員や児童相談所での経験があり、今後どうキャリアを進めるべきか迷っている方に向けて、エールやメッセージ等お願いいたします!
佐名:
AiCANには、児相での経験年数に関わらず、現場での勤務経験がある方なら、必ずその学びを活かせる場所があるということを伝えたいです。一緒に世界の子どもを守っていきたい!以上です!
太田:
私はキャリアチェンジをして何の後悔もしていません。なので、AiCANに興味がある人はぜひ飛び込んできてほしいなと思っています!
太田さん、佐名さん、ありがとうございました!今回のインタビューはここまでです。次回もお楽しみに!
現在、お二人が活躍するポジションを含め、複数の職種で積極採用中です。
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